「モラハラ夫」が増えた理由

最近、「熟年離婚」といわれる同居して20年以上の夫婦が離婚するケースが増えています。少し前の2022年の統計によれば、その年に離婚した夫婦のうちの4組に1組が熟年離婚といわれました。そして、この割合は戦後の最高値を記録しました。

私が受ける離婚相談も、離婚相談サロンを始めたころは「夫の不貞問題やそれに伴う金銭的な問題による離婚相談」が大半でしたが、現在はそうした相談は減っています。その代わりに増えているのが、「モラルハラスメント」と「価値観の相違」についての相談です。こうした相談が増えたことが、熟年離婚が増えた一因にもなっているのだと考えています。

「モラルハラスメント=モラハラ」とは、倫理・道徳に反する嫌がらせ行為とされています。具体的には、言葉や態度によって相手を精神的に追い詰めて、人格や尊厳を傷つける行為を指します。
妻や家族に身体的な暴力的な振るう「ドメスティック・バイオレンス=DV」に対して、身体的な暴力は伴わないものの、無視、暴言、威圧的な態度などの精神的な攻撃によって、相手を精神的に傷を負わせるのが「モラハラ」です。社会で「DV」が問題視され、事件になったり、逮捕されるリスクが広く知られるようになったことで、「モラハラ」が増えてしまったようにも思われます。
「モラハラ」が厄介なのは、モラハラしている本人が暴言や嫌がらせをしているという意識はなく、相手の間違っていることを指摘している、注意をして正してあげているという思いでいるというところです。
もう1つの問題点は、モラハラを受けている側が、こうした暴言や批判を受け続けるうちに「私が悪いから」と洗脳に近い状態に陥ってしまうことです。
長年連れ添ってきた熟年夫婦の妻が「モラハラ」という言葉を知り、自分は夫から「モラハラ」を受けているのではないかと気づき、相談に来られる方が増えているというのが現状です。
ハラスメントの対義語は、配慮とされています。長年連れ添ってきた一番身近な相手だからこそ、家族という関係だからこそ、「配慮」を忘れがちなのではないでしょうか。夫婦がお互いに配慮を心がけることで、互いを尊重し合うことができ、そこに信頼が生まれるものなのです。

この記事は私が監修しています | 夫婦問題研究家 岡野あつこ
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