「離婚約(りこんやく)」する人が増えているといいます。
「離婚約」という言葉は、まだ聞き慣れない言葉ですが、夫婦で話し合い、期日を決めて離婚しようと交わす約束のことです。離婚約中に関係が改善した場合には、取り消すことも可能です。
「離婚約」によって、夫婦がお互いに嫌になってしまっていても、一緒に生活をしていくことになります。本当は別れたい状態なのに、子どものためとか経済のためとか、いろいろな事情があるなか、「~年後に別れましょう」とお互いが契約を交わしたうえで、なんとか生活を続けていくという打開策です。そういう意味では新しい夫婦の契約といえるでしょう。
離婚する場合、夫婦はもめるものです。ドロドロになってしまうことも少なくありません。夫婦がともに、もしくはどちらかが我慢の限度をこえてしまい爆発して「もう出て行く! 離婚だ!」となった挙げ句、調停だ、裁判だともめる夫婦は多いのです。そのなかで、「離婚約」はもめない離婚の前例となるような新しい形なので、最近の若い夫婦には増えていますが、熟年夫婦にはまだ難しいかもしれません。
「離婚約」のメリットはというと、私の相談サロンに来られる男性相談者にはモラハラなどという理由で、妻から離婚を突きつけらるケースが増えて来ました。夫側は、離婚を突きつけられて初めて、「オレはモラハラしていたんだ」と気づくのです。そのときになって「ごめんなさい」と謝っても、妻のほうは「今さら何を言ってるの!」と怒りがおさまらなくなってしまい、「もう絶対戻らない!」と離婚になってしまうケースは少なくありません。
「離婚約」をすればチャンスがあります。自分自身を改善するチャンスがあるし、夫婦関係を改善する可能性もあるという意味では、メリットはあるはずです。離婚約には期限があります。ゴールが決まっていることで相手の嫌なところも我慢できるし、お互いの将来に向けて前向きな話ができるということもメリットでしょう。
切り出すタイミングは、2人の価値観は合わないけれど、まだなんとか我慢ができるという状態でなければできません。相手が浮気をしているような場合は、出て行ってしまうケースも多く、「離婚約」は難しいでしょう。
今、コロナ禍の影響もありますが、夫婦の形が多様化しているなかでのひとつの選択肢になるではないでしょうか。いろいろな形が増えるなかで、「離婚約」というのは、壊れかけている夫婦の関係修復の1つの打開策といえます。
「離婚約」のデメリットについては、相手にコントロールされてどちらかを選ぶことになってしまうリスクもあります。反面、共同親権を視野にいれたり、お互いが離婚までにしっかり話し合えるので、もめることは少ないのではないでしょうか。前例はまだそれほどありませんし、「離婚約」はまだ始まったばかりです。前例が多くなってくれば、もめない離婚というところに到達できるかもしれません。
「離婚約」をしても、離婚する人はしてしまいます。結局、離婚になってしまうこともあるのですが、「離婚約」をすることによって、まだ改善の余地が充分にある、子どもたちとお父さんお母さんとして触れ合うことで、自分たちも夫婦を続けていけるのではないかと気づく人たちも多くなるはずです。ですから、感情的になって、何が何でも離婚、ということではなくなるでしょう。
離婚の約束をしたことによって、いろいろな思い出、過ごしてきた夫婦の歴史を思い出したりもできるので、これは夫婦関係を改善の方向に向ける、リーサルウェポン的なものになるかもしれません。
「離婚約」には法的拘束力はありませんが、スムーズに進めるには専門家に法的なアドバイスを求めたほうがよいでしょう。できれば書面化することをオススメします。