2007年に年金分割が施行されるまでは、離婚しても「主婦の内助の功」は認められず、夫がかけていた年金は妻に分割されませんでした。今は、年金分割がみとめられるようになったので、熟年離婚しても、妻は経済的に少し安心ではないでしょうか。
ただ、こうした年金分割にも落とし穴があることは、あまり知られていません。離婚した妻に年金分割が認められるのは、夫が厚生年金をかけている場合だけです。国民年金の場合は分割されません。厚生年金の場合に限って、専業主婦の妻に対して、夫がかけていた年金の半分が妻に分けられます。
このときに注意すべきことは、結婚していたた期間の分のみが分けられるので、晩婚であったり、再婚である場合には、結婚期間が意外に短く、思っていたより分割される金額が少なくなってしまうケースも少なくありません。
こうしたことを防ぐためには、実際に年金事務所を訪ねて、「離婚を考えているのですが」と職員の方にお話をすると、具体的な数字を教えてもらえるということもあるそうです。今は、ネットでサイトを検索すると、自動計算できるものなどもありますが、自分の足で訪ねて、自分の耳で聞いておくほうがよいでしょう。
次に、実際に熟年離婚をしたA子さんのケースと具体的に相談した結果、熟年離婚を踏み止まったB子さんのケースのお話をします。
〈A子さんのケース〉
A子さんは資産家の夫と結婚していましたが、浮気を繰り返す夫に疲れていました。いつも夫の浮気に悩まされて、ストレスを抱えていました。このままではストレスで早死にしてしまうと、離婚を決意しました。夫には十分な資産があったため、財産分与を受けて、老後はストレスなく悠々自適に暮らしたいと、弁護士を立てて、時間はかかりましたが、無事に離婚は成立しました。
ところが、離婚成立から1ヶ月も経たないうちに、夫が急逝してしまったのです。離婚によるストレスの影響もあったと思われますが、A子さんはもう少し我慢していれば、夫の資産がもっと手に入ったのに、とひどく落ち込んでしまいました。もちろん結果論ですから、離婚していなければ、ストレスでA子さんのほうが早死にしてしまったかもしれませんが、大きな後悔が残りました。
〈B子さんのケース〉
B子さんは共働きの夫婦です。自分は贅沢もせず、生活を切り詰めて貯金をしていました。結果、まとまった数千万円という貯金があります。一方で、夫は稼いだ分は全部使ってしまい、貯金は0です。自分勝手な夫に呆れてしまい、離婚を決意しました。
B子さんの夫は土地やアパートを持っていましたので、その半分が離婚により自分ものになると考えていました。ところが、弁護士に相談すると、離婚すると、B子さんが一生懸命にためた貯金は半分夫に渡り、半分もらえると思っていた夫の土地とアパートは、先祖から譲り受けたものなので、分割される財産ではないとわかったのです。もし、B子さんが知らずに熟年離婚を切り出していたら、「こんなはずではなかった」になってしまったでしょう。
熟年離婚では、こうしたさまざまなケースが起こります。ですから、熟年離婚をするなら、しっかりとした準備と覚悟をすることが大切です。そして、なにより知識武装が大切です。準備も知識もなく、離婚を切り出して、損してしまったケースが意外に多いのです。しっかりとした知識を得るためには、実際のケースから生きた知識を学ぶことが大切です。自分では、と不安に思う方は、私達のようなプロにぜひ相談してください。
熟年離婚という言葉が頭をよぎったら、あらゆる面から準備をし、あらゆるケース想定することが重要です。そして、後悔をしないために「必ず私は幸せになる!」という強い信念をもって、熟年離婚に挑戦してほしいです。